むくみは女性に多い悩みであり、これには食事や生活習慣など様々な原因が考えられます。今回はそんなむくみの原因や解決方法について解説していきます。
むくみは皮下組織に水がたまった状態
むくみは、皮下組織(皮膚の下部)に異常に水がたまった状態であり、”組織間隙(Interstitial space)に生理的な代償能力を越えて過剰な水分が貯留した状態”と定義される症状です。医学的にはこれを浮腫(ふしゅ)と言います。
女性に多い症状であり、ふくらはぎなどがパンパンになり、靴下やストッキングの跡がくっきりと残ってしまうという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
むくみの原因
では、なぜむくみは起こるのでしょうか?
原因を探るためにまずはむくみの種類から確認しましょう。むくみは大きく3種類に分けられます。
- 非圧痕性浮腫
- 早い圧痕性浮腫 rapid edema
- 遅い圧痕性浮腫 slow edema
これらはどのような違いがあるのでしょうか。
非圧痕性浮腫
非圧痕性浮腫はパンパンに張っていてむくんでいる部分を押しても凹まないという症状が特徴的です。これは、甲状腺低下症やリンパ性のものなどが原因として考えられ、リンパ性のむくみなどは、むくみに効果があると言われる栄養素などを摂取してもなかなか解消は難しいと言われます。
早い圧痕性浮腫 rapid edema
圧痕性浮腫はむくんでいる部分を押すと凹むものを言い、これは凹みの戻りが早い圧痕性浮腫と遅い圧痕性浮腫に分けられます。
むくみを指で5mmくらい押し、元に戻るのに40秒未満のものを早い圧痕性浮腫、押してから元に戻るのに40秒以上かかるものを遅い圧痕性浮腫と言います。
この2つのうち早い圧痕性浮腫は栄養学的なアプローチが有効であり、むくみの大半はこのタイプであると考えられます。
早い圧痕性浮腫の主な原因は低アルブミン血症が疑われます。アルブミンは肝臓でタンパク質から作られるので、肝臓の機能低下(肝硬変など)やたんぱく質、マグネシウム、ビタミンB6など栄養素の不足が考えられます。
遅い圧痕性浮腫 slow edema
こちらの原因は心不全や腎臓不全、火傷などが考えられます。これらは栄養学的アプローチでも一部改善が見られることもありますが、非圧痕性浮腫と遅い圧痕性浮腫は他の疾患が原因となっている事が考えられるので、まずは医師の診断を受けることが大切です。
日常生活に潜むむくみの原因
早い圧痕性浮腫は主に低アルブミン血症などが疑われますが、それ以外にもむくみには下記の様な多くの原因があります。
- 低カロリー、たんぱく質不足
- 運動・筋肉量の不足
- 冷え
- アルコール
- 過剰な塩分摂取
- 長時間の同じ姿勢
- 水分不足
低カロリー、たんぱく質不足
たんぱく質が不足すると体内でアルブミンを作ることができません。アルブミンが不足すると、血管内に水分を維持する働きが弱くなり、血管と細胞の間に水分が流れ出る(むくみ)原因となります。
また、たんぱく質を多く摂っていても極端なダイエットなどでカロリーが不足していると、たんぱく質がエネルギーとして使われてしまい、アルブミンを作ることができません。
運動・筋肉量の不足
運動不足や筋肉量が少ないこともむくみの原因になります。筋肉は血液を循環させるポンプの役割があり、特にふくらはぎの筋肉は心臓から1番遠く、重力に逆らって血液を心臓に戻さなければならないので、第二の心臓とも呼ばれます。
その為、筋肉量の多い男性は女性に比べ、この筋ポンプ作用が強く、比較的むくみにくいと考えられます。
長時間の同じ姿勢
デスクワークや立ち仕事など、長時間同じ姿勢を続ける事も筋ポンプが働きづらく、むくみやすいと考えられます。
水分不足
むくんでいるからと言って、水分を控えるのは逆効果です。水分が不足すると身体は水分を溜め込もうとするので、水分の不足には注意が必要です。
過剰な塩分摂取
摂取した食塩はほぼ全量がナトリウムと塩素として吸収されます。塩分の取り過ぎはむくみだけでなく、高血圧などの原因にもなります。
アルコール
アルコールは血管内脱水の作用があり、飲みすぎると身体の水分が失われ、血液濃度が高まります。これにより、身体は血管内に水分を取り込み、血液濃度を低くしようとしますが、この時に取り込んだ水分の一部がむくみの原因となります。
むくみの改善に有効な4つの方法
非圧痕性浮腫と遅い圧痕性浮腫はまず医師の診断を受けて頂き、ここからは、早い圧痕性浮腫に対するアプローチを解説していきます。
むくみの改善には下記のようなアプローチが有効です。
- マッサージ、ストレッチ
- 運動
- 食事
- 生活習慣
マッサージ、ストレッチ
むくんでいる部位にストレッチやマッサージを行うことで血流を促し、むくみを解消します。
■ヒラメ筋のストレッチ
■下腿三頭筋のストレッチ
マッサージやストレッチは、むくみに効果的ですが、あくまでも一時的なむくみの解消です。
長時間のデスクワークや立ち仕事の後などに有効ですが、慢性的なむくみの場合は他のアプローチも併せて行いましょう。
運動
運動で得られる短期的な効果は”血液循環の向上”、長期的な効果は筋肉量の増加による”筋ポンプ作用の強化”です。
■スクワット
■カーフレイズ
短期的な効果はストレッチなどと同様で、筋肉を動かす事で血液循環を促し、一時的なむくみの解消が可能です。長期的な効果としては、筋肉量を増やす事で筋ポンプ作用が高まり、むくみにくい状態となります。
生活習慣
下記の様な習慣を日々の生活の中に取り入れることも有効です。
- 38度前後で20分程度の入浴
- 就寝1~2時間前のスマホ、テレビなどは控える
- 7~8時間睡眠
- 朝日を浴びる
- 適度な運動
これらは自律神経のバランスを整えます。自律神経は血液循環にも関わっているので、むくみの対策にもなります。
食事
栄養摂取では、たんぱく質、ビタミン、ミネラルなどむくみに影響を与える要素が沢山あります。食事は次の項で詳しく解説します。
むくみは解消に有効な4つの栄養素
ここからは、食事でのアプローチを解説していきます。
たんぱく質
たんぱく質の一種であるアルブミンが不足すると、血管内に水分をキープする働きが弱くなり、血管と細胞の間に水分が流れ出る原因となります。アルブミンは肝臓で作られるたんぱく質で、食事からのたんぱく質摂取が不足すると体内でアルブミンを作ることができません。
そのため、たんぱく質の不足はむくみの原因となるので、たんぱく質を積極的に摂取しましょう。

マグネシウム
マグネシウムは細胞内のナトリウム量を調整することで、血液循環をスムーズにする働きがあります。
厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2020)」によると、マグネシウムの1日に必要な量は男性(18~29)で340mgとされており、女性では1日に200~250mgのマグネシウムを1週間摂取するとむくみが減少したという研究もあります。
■マグネシウムの多い食材
- 豆腐
- 納豆
- ひじき
- ごま
- ほうれん草
- バナナ
マグネシウムは吸収率が低い栄養素です。マグネシウムは経口摂取だけでなく、経皮吸収(皮膚から吸収する)が可能な栄養素なので、バスソルトなどを使用するのもおすすめです。
使用する場合は、お風呂に150~300gのエプソムソルトを入れて20分ほど入浴しましょう。
ビタミンB6
ビタミンB6は摂取したマグネシウムを細胞内に取り込む働きがあります。
またビタミンB6が不足すると腎臓内のドーパミン量が減少します。ドーパミンはナトリウムをキープする働きがあり、ドーパミンが減少するとナトリウムを体外に排出してしまいます。
ナトリウム濃度が高くなることは問題ですが、筋肉の収縮や神経伝達に関わるため、不足にも注意が必要です。ビタミンB6不足によりナトリウムが過度に排出されると、より水分を貯めやすくなるので、ビタミンB6は1日あたり50mgは最低必要であると考えられます。
■ビタミンB6の多い食材
- レバー
- ささみ
- マグロ
- ニンニク
カリウム
カリウムとナトリウムは常に拮抗関係にあり、バランスを保っていますが、日本人はナトリウム過多でカリウムの摂取量が低いと言われています。
カリウムは浸透圧の調整や水分保持、神経伝達、筋収縮などに関わっており、ナトリウムが尿細管から再吸収されるのを防ぎ、尿での排泄を促します。
■カリウムの多い食材
- さつまいも
- アボカド
- ほうれん草
- バナナ
- 納豆
- さわら
- 若鶏(鶏モモ、皮なし)
塩分(ナトリウム)摂取のポイント
塩分の過剰摂取はむくみの原因になりますが、全く必要がない訳ではありません。そのため、塩分の摂取は2つのポイントを押さえておきましょう。
塩は天然塩を選ぼう!
市販されている塩には、
- 天然塩
- 精製塩
の2種類があります。
天然塩はナトリウム以外にもマグネシウム、カリウムなどのミネラルも含まれていますが、精製塩はナトリウム以外のミネラルがあまり含まれていません。そのため、塩分を摂る際は天然塩を選ぶと良いでしょう。
塩分摂取の目安
厚生労働省が発表する「日本人の食事摂取基準(2020)」では、1日の塩分摂取量として男性は7.5g未満、女性は6.5g未満としています。WHOの基準では、1日あたり5g未満となっており、まずは塩分摂取を抑える事を意識していきましょう。
まとめ
- 早い圧痕性浮腫は食事や生活習慣によるアプローチが有効
- たんぱく質・カリウム・マグネシウム・ビタミンB6の摂取が効果的
- マッサージ・ストレッチ・運動は一時的なむくみ改善が可能
- 過剰な塩分摂取に要注意
- その他の疾患が原因のむくみは必ず医師の診断を受けよう
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参考文献
https://www.epsomsaltcouncil.org/wp-content/uploads/2015/10/report_on_absorption_of_magnesium_sulfate.pdf
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