【アルコール代謝の仕組みを解説】お酒との上手な付き合い方を知ろう!

アルコールは厚生労働省が発表する「日本人の食事摂取基準(2020)」において必須栄養素ではないと明記されています。つまり、飲まなくても良いものですが、それでもお酒が好きという方は多いはず。

適度に飲むのは良いですが、付き合い方を間違えると、肥満の原因になったり、身体に負担をかけてしまう恐れもあります。そこで今回は摂取したアルコールがどのように体内で働くのかということと合わせて飲む際に気をつけるべきポイントを解説していきます。

目次

アルコールのカロリーとダイエットについて


三大栄養素である、たんぱく質、脂質、炭水化物(糖質)はそれぞれ4kcal、9kcal、4kcalとカロリーを持っており、これらは身体を動かすエネルギー源(ATP)となります。

この様に身体を動かすエネルギー源になる栄養素を熱量素と呼び、アルコールも同様に1gあたり7kcalのエネルギーがあります。しかし、アルコールのエネルギーは三大栄養素の様に身体を動かすエネルギー(ATP)になる事はできません。

そのため、お酒のカロリーは空のエネルギーとして”エンプティカロリー”と呼ばれることもあります。

エンプティカロリーだから太らないは嘘!

お酒のカロリーは「エンプティカロリーだから太らない」や「蒸留酒なら太らない」という事を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか?

基本的にカロリー収支がプラス(摂取カロリーが消費カロリーを上回っている状態)になると体重は増加します。

しかし、アルコールのカロリーは人の身体ではエネルギーにすることができないので、飲み過ぎても体重が増加することはありません。ただし、他の食べ物を一緒に食べている場合は話が別で、太る原因になります。

アルコールは身体を動かすエネルギーにはなりませんが、体内で熱エネルギーに変換され、体温を上昇させます。人は常に体温を保つため、脂質や糖質のエネルギーを利用して体温を調整していますが、アルコールはこの代わりに体温を上昇させるので、本来熱エネルギーとして利用されるはずの脂質や糖質が余ってしまい、それが体脂肪として蓄積されやすくなります。

つまり、アルコール単体で摂取カロリーがオーバーする場合には、体重の増加は起こりにくいのですが、おつまみなど食事も一緒に食べている場合は太る原因になります。これは蒸留酒でも同様です。

ご自身に必要な摂取カロリーについて知りたい方は下記の記事を参考にしてください。

アルコールの代謝の仕組み

ここからは体内に入ったアルコールがどのように分解されるのかという事を解説します。

アルコールの吸収


摂取したアルコールは20%が胃で吸収され、残りの80%が小腸で吸収されます。

大抵の食べ物は胃で消化され、小腸で吸収されますが、アルコールは消化の過程がないことで胃から吸収されるというのが特徴です。

アルコールは胃での吸収はゆっくりと進みますが、小腸での吸収は素早く行われます。空腹時にアルコールを摂取すると酔いが周りやすいと感じたことがある方も多いのではないでしょうか?

これは空腹時はアルコールの胃通過速度が早くなり、素早く小腸に運ばれる為、血中アルコール濃度が上がりやすく、酔いがまわりやすくなるためです。

この様に、条件により吸収速度は異なりますが、摂取したアルコールは1〜2時間程度で胃や小腸から吸収され、血中アルコール濃度は30分〜120分でピークを迎えます。

アルコールの代謝経路

では、吸収されたアルコールはどの様に分解されるのでしょうか?

まず胃や小腸で吸収されたアルコールは血液に乗り、肝臓へ運ばれます。

ここでアルコールはADH(アルコール脱水素酵素)やMEOS(ミクロゾームエタノール酸化系)などの酵素の反応により、アセトアルデヒドになります。 このアセトアルデヒドは悪酔いや頭痛、動悸、二日酔いなどの原因になる為、身体は早い段階でこれを無害化しようとします。

そのためアセトアルデヒドは肝臓で優先的に処理され、ALDH(アサトアルデヒド脱水素酵素)が反応することで酢酸になります。この酢酸は血液により全身をめぐり、筋肉や他の臓器で熱エネルギーを放出し、水と二酸化炭素になり無害化され、汗や尿、呼吸中に含まれ体外へ排出されます。

お酒を飲んで身体がほてったり、赤くなったりするのは酢酸が水と二酸化炭素になる過程で生まれた熱エネルギーによるものです。

アルコールの分解にかかる時間は?

1時間に処理できるアルコールの量は性別や体格など様々な要因で異なりますが、男性で約9g、女性で約6.5gが目安となります。

アルコール度数が5%の350ml缶ビールを飲んだ場合、約18gのアルコールが含まれているので、無害化するまでに男性で2時間、女性で3時間程度は必要になると考えられます。

分解にかかる時間は酵素活性などにより、変わるので明確な時間は分かりませんが、体格に応じた計算式なども参考になります。

分解速度 ⇒  成人で体重1kg当たり1時間に0.1g
体重60kgの成人の場合 1時間に 約6g

  • アルコール分7%の缶チューハイ350ml缶の中に含まれるアルコールの量 ⇒ 約20g
  • 缶チューハイに含まれるアルコールの分解にかかる時間 ⇒ 約3時間
    ※缶チューハイを2缶飲めば、分解するのに約2倍の時間がかかります。

アルコールの分解能力は遺伝で決まっている

アルコールを摂取すると、顔が赤くなったり、気持ち悪くなったりと人により様々な反応が起こります。これらの反応をまとめて”フラッシング反応”といい、反応の出やすさはアルデヒドゲヒドロゲナーゼの活性によって決まります。

アルデヒドゲヒドロゲナーゼはアセトアルデヒドを酢酸に変える酵素であり、 この酵素の働きは遺伝でその強さが決まっています。

この強さは大きく3タイプに分類されます。

アルデヒドゲヒドロゲナーゼの活性タイプ
  1. 活性型
    →正常に働く
  2. 低活性型
    →ゆっくり働く
  3. 非活性型
    →働かない

活性型はアルコールの処理能力が高く、フラッシング反応が出にくく、逆に非活性型はフラッシング反応が出やすいといえます。

つまり、アルデヒドゲヒドロゲナーゼの活性によってお酒の強さはある程度決まっているので、非活性型の方がお酒を飲むことで活性型になって強くなるということはありません。

アルデヒドゲヒドロゲナーゼの活性はアルコールパッチテストでわかる

では、自分がアルデヒドゲヒドロゲナーゼの活性が高いのかどうかを知る方法はあるのでしょうか?

これは、アルコールパッチテストで調べることができます。

医療機関などで行う方が正確性は高まりますが、Amazonなどで簡易的なものを購入して確認することもできます。

タウリンは非活性型には意味がない

タウリンは肝臓の働きを活発にすることで、アルコールの代謝を早くする働きがあります。しかし、サプリメントなどでタウリンを摂って肝臓の働きを高めたところで、アルデヒドゲヒドロゲナーゼの活性が低い方には効果はあまり見込めません。

活性型の方はサプリなどでタウリンを摂ることで、アルコールの代謝を早め、二日酔いなどを予防する効果が期待できます。

アルコールは飲むと強くなる?

先ほどアルデヒドゲヒドロゲナーゼの活性はお酒を飲んでも強くならないとお伝えしましたが、お酒を習慣的に飲んでいるとお酒に強くなったと感じる方も多いはずです。

これにはもう一つのアルコール分解酵素群のMEOSが関係しています。

もう一つのアルコール分解酵素群のMEOSでは、習慣的な飲酒を続けていると、特にチトクロームP4502E1(CYP2E1)と呼ばれる酵素が増えてきます。習慣的に飲んでいるとアルコールに強くなって飲めるようになる主な理由は、脳での耐性が進んでアルコールが効かなくなるためですが、もう一つの理由がこのCYP2E1が増えてアルコール代謝が速くなるためとされています。ADHはほろ酔い濃度で酵素の働きが最大になりますが、CYP2E1の働きは酩酊濃度(1mg/mL以上)で最大になります。習慣的な多量飲酒者では、酩酊濃度でのアルコール分解速度が速くなるのです。しかし、CYP2E1は数日の休肝日で酵素量が減り、1週間も飲まないともとに戻ってしまいます。このように、同じ人でもアルコール代謝の速度が速くなったり遅くなったりします。

厚生労働省:e-ヘルスネット「アルコールの吸収と分解」

習慣的な飲酒は、

  1. 脳でのアルコール耐性を高める。
  2. チトクロームP4502E1(CYP2E1)が増え、アルコール代謝が速くなる。

と考えられています。この2つにより、アルコールに強くなって飲めるようになると考えられます。

しかし、CYP2E1は数日のお酒を飲まないだけでも酵素量が減り、1週間も飲まないともとに戻ってしまいます。お酒を久しぶりに飲むと酔いやすいというのは酵素量の変化でアルコールの代謝速度が遅くなっているのかも知れません。

お酒との上手な付き合い方

飲まないほうが良いことをわかっていても、飲みたくなるのがお酒です。禁酒ができる方は良いですが、お酒が好きな方や付き合いでどうしても飲まないといけない方は飲む際にポイントを押さえてうまく付き合っていきましょう。

水を飲む

アルコールを分解するために水の必要量が増します。これにアルコールの利尿作用も相まって脱水が進み体内の水分量が不足します。お酒を飲む際は飲む前からこまめな水分補給を行い、飲んでる際もお酒とは別に水を飲む様にしましょう。

また飲んでいる時だけでなく、就寝前や翌日の朝にもコップ一杯程度の水を飲む様にしましょう。

空腹状態で飲まない

空腹の状態ではアルコールの吸収速度が速くなり、酔いやすくなるので空腹で飲むのは避けましょう。しかし、食べ過ぎは肥満の原因になるので、おつまみは低脂質なタンパク質源(エイヒレや鮭とば、砂肝、お刺身など)や葉物野菜、トマトなどを選べると良いでしょう。

適量を知る

お酒の飲み過ぎは身体に大きな負担がかかります。健康やダイエットの事を考えるのであれば、飲まないに越したことはありませんが、飲む場合は1~2杯程度にできると良いでしょう。

アルコールとして10g/日を超えるアルコール摂取は健康障害のリスクであり、また、10g/日未満であってもそのリスクが下がるわけではないと報告している。また、およそ60万人の飲酒者を含む83のコホート研究をまとめたメタ・アナリシスでは、総死亡率を低く保つための閾値(上限)を100g/週としている。

厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2020)

亜鉛、ビタミンB群の不足を防ぐ

アルコールをアセトアルデヒドに分解する際に必要なアルコールゲヒドロキナーゼは亜鉛などを元に作られます。

そのため、飲酒は亜鉛不足の原因となり、アルコールを飲まれる場合は通常よりも多くの亜鉛が必要になります。

また、そもそも亜鉛は飲酒に関わらず、不足しやすい栄養素であり、加齢と共に体内貯蔵量も減少していきます。年齢と共にお酒が弱くなったと感じる方は体内の亜鉛が不足したことが原因になっているかも知れません。

飲酒をされる方は、最低でも1日あたり30mgの亜鉛を摂取できるとよいでしょう。

次にアセトアルデヒドを酢酸に分解する際にはNAD+が必要であり、これはナイアシン(ビタミンB3)から作られます。

ビタミンB群と呼ばれる様にビタミンBは複数の種類があり、単一で摂取しても体内で働きずらいという特徴があるので、ビタミンB3だけでなく、ビタミンB群として一緒に摂取する様にしましょう。

またこのビタミンB群を体内で使える様にする為(活性型)には、亜鉛などのミネラルの働きが必要です。この理由からも亜鉛の重要度が高まり、お酒を飲まれる方は亜鉛とビタミンB群が不足しやすいと言えます。

サプリメントで補う場合は、こちらがおすすめです。

■ビタミンB群
https://jp.iherb.com/pr/life-extension-bioactive-complete-b-complex-60-vegetarian-capsules/67051

■亜鉛
https://jp.iherb.com/pr/now-foods-l-optizinc-30-mg-100-veg-capsules/738

まとめ

  • 食べ合わせによってはアルコールも体重増加の原因になる。
  • アルコールの分解には、亜鉛やビタミンB群が必要。飲むならこれらを補おう。
  • 健康を考えるならアルコールの摂取量は週100g以内が目安。
  • お酒の強さは遺伝で決まるが、習慣的に飲むことで多少の変化はある。

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参考文献
Genetic polymorphism of alcohol and aldehyde dehydrogenase and the effects on alcohol metabolism https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8512495/

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この記事を書いた人

【元帰宅部トレーナー】
運動経験が少なかったからこそわかるトレーニングの不安や緊張を一緒に解決しつつ、初めての方でもわかりやすい指導を心がけている。

甘いもの、お酒が好き。

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